鴉の過去、夜咫の頃のお話
夜咫の大切なトモダチのお話･･･

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『やぁ夜咫、身体の調子はどうかな』

そう言って、お前は毎日欠かさず俺の所へ来てくれた

『あぁ、また無茶をして･･･君は自分が病弱だという自覚はないのかい？』

俺が自分の身体の事など気にせずにいれば、すぐに苦笑を浮かべて心配して

『今日は森で烏天狗達に会ってしまってね、随分と追い回されたよ』

そんなに表に出る事の出来ない俺に、いつも外での出来事を話し聞かせてくれた

『ねぇ、夜咫』

俺の･･･大切なトモダチだった

『ボクがもし、己の血の宿命に抗えなくなったら･･･君がボクを殺してくれるかい？』

大切な、トモダチだったんだ･･･

『･･・ゴメンネ･･･』

アイツが、人を襲うようになる前までは･･･



「････夜咫･･･やっと、来てくれたんだね」
「･･･」

あたり一面に広がる、赤
その赤に混ざるように、肉片やもぎ取られた手足が転がっている

「フフッ･･･こんなボクとは、口も聞きたくないって事かな？」

自嘲的な笑みを浮かべて、アイツはニヤリと笑っていた

「私の名は夜行･･･夜行鴉だ、貴様の言う『夜咫』ではない」

そう言うと、一瞬だけアイツの瞳が揺らいだ気がした
狂気の奥にかすかに見えた、哀愁を帯びた光

「そう･･･彼の有名な陰陽師様が、このボクをどうしようって？」
「多くの人を殺し、その血を貪る悪鬼。
　私は貴様を滅するために来たのだ･･･吸血鬼よ･･･」

バサリと、アイツの着ているマントが風に靡いた
マントの下に見える西洋の聖職者の衣服には、うっすらと赤が滲んでいた

「･･･ボクがそう簡単にやられるとでも？」
「簡単ではないだろうが、私とて弱くは無い」
「ハハッ･･･じゃあ、殺ってみなよ･･･夜行鴉！！！」

そう言って俺に襲い掛かってきたアイツは･･･もう昔のアイツではないとわかっていた
けれど･･･狂気にまみれながらも苦しんでいる
アヤカシでありながら･･･人をこよなく愛し、慈しんでいた
とても優しく、穏やかだったアイツ
己の身体に流れる血の本能に、いつも怯えていたアイツ

『ボクがもし、己の血の宿命に抗えなくなったら･･･君がボクを殺してくれるかい？』

たった一度の、あいつからの約束
随分と時間がかかってしまった
そのせいで、とても苦しませてしまった

「･･･果たせなかった約束を、今果たそう･･･カゲツ･･･」

俺は、大切なトモダチを
何の躊躇もなく、殺した

「･･･あり、がとぅ･･・・・やた･･･」

最後に見せたその笑みは
昔と全く変わらない、あの穏やかな笑みだった


※※※後書き※※※
鴉氏の過去話
鴉氏は昔は病弱で、中々外に出れませんでした
そんな彼に外の話や遊び相手をしてくれていた人物がいました
その人物はカゲツとい名の青年で、吸血鬼でありながら聖職者をしてました
人が好きで、とても優しい青年でした
でも吸血鬼である事に変わりはなく、カゲツも吸血鬼の本能に逆らえなくなってしまったのですよ
本能に逆らえなくなる前に、夜咫に自分を殺してくれと頼むのですが、彼はまだ力量も覚悟も足りなくて
結局、カゲツは本能に飲み込まれて、人を襲う吸血鬼となってしまったのです
夜咫は彼を止めたくて、一生懸命技と身体を鍛えて
それで成人して父親から「鴉」の名をもらい、凄腕の陰陽師となりました
で、念願の逢瀬と･･･果たせなかった約束を果たすという･･･あぁ何か後書きかいてて迷子になるってどうなんでしょうね（しらねぇよ）
でもかけて楽しかった･･･！

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